もしも『鶴の恩返し』の作者が "aiko" だったら
むかしむかし、真っ暗真っ暗たまらぬ雪の降るところに、おじいさんとおばあさんが暮らしていました。彼らはとても貧乏でしたが、とても親切でした。
薄着だから肌寒いある晩のこと。おじいさんが町へ出かけて帰る途中、罠にかかった一羽の鶴を見かけました。
おじいさんは最初、目を背けてはいけないと解っていたのですが、「遠くで見てますから声はかけませんが」と一人つぶやくと、鶴の元を去ろうとしました。
しかし、おじいさんは、雪が降れば鶴は泣くであろうことを思い、可哀想と手をさしのべ、ひとり迷子の鶴を助けてやることにしました。
さて、家に帰っておばあさんと夕食の支度をしていると、外はまだきっと寒いだろうに、誰かが家の戸を叩いてきました。
戸を開けてみると、そこには美しい女の子がそこに立っていました。
声を掛けると、女の子は言いました。
「吹き荒れる雪で、道に迷ってしまいました。寒い日はもう越せません。どうか一晩ここに泊めてもらえないでしょうか。」
貧乏なおじいさんたちは、「あなたはあたしよりうんと背が高いから、この布団もきっと小さいだろうけど、それでも良いのであれば」と言って、女の子を泊めてあげることにしました。
その後もしばらく吹雪が続いたため、女の子は何泊もの間、おじいさんたちの家に泊めてもらうことになりました。
彼女はとてもよく働き、ついには「この家の子どもにしてください。我が儘だろうとお願いだから」と言ってきました。
子どものいないおじいさんたちは大喜びで「これからあたしたち、ベッドで朝にオハヨウ!」と言いました。二人にとっては、この世で初めて見つけた宝物のようでした。
ある日、彼女が「はた織りをするので、あたしはここに入りたい。絶対に覗かないでください。」と言って、部屋に閉じこもってしまいました。
おじいさんとおばあさんは、彼女の部屋を覗かないことを誓い合い、二人だけで決めた約束に永遠の秘密を交わしました。
それからというもの、彼女は来る日も来る日も、はたを織り続けました。それはそれは毎日不安です。
おじいさんは、2日3日そっけないフリをしましたが、寂しいとか悲しいとかやっぱり言えなくて、扉越しの彼女に向かって、今日も「話そうよ」と言ってみました。しかし、連絡もなく、ずっと待ってるのも堅苦しくなってきていました。
戸を開けてしまいそうになったこともありましたが、約束交わした日の朝を思い出し、もう一度だけ手が触れた後だったらきっとダメだったであろうところで何とか我慢しました。
一方で、おじいさんたちは、同じ場所この部屋で、はた織りの音を聞くのが好きになっていました。
こうして、彼女は5日目の夜にとても美しい錦を織り上げました。
女の子は、戸のわずかな隙間から織り上げた錦を差し出すと、また部屋にこもってはた織りを始めました。
次の日、おじいさんが淋しさまぎらわすために着替えて町へと飛び出し、錦の織物を売りに出してみると、なんと、驚くほどの高いお金で売れました。
おじいさんは、そのお金で糸を買い、慌てて家へ帰りました。
こうしてしばらくの間、彼女に錦を織ってもらうことにしました。
何日かたったある日、彼女が織物をしている姿が気になってしまい、誰にも入れない部屋を二人で開けてみようと、おばあさんと一緒に戸を少し開けて中を覗いてみました。するとそこには、バニラのにおいがするtinyな女の子ではなく、なんと、鶴がいたのです。
鶴は言いました。
「雪の中、罠に掛かっていたのを助けてくれてありがとうございました。いつかのあなたの右手が凍える夜中から連れ出してくれたんだよ。こうして機織りをすることで、恩返しをさせてもらいました。でもね、私はいつでも戻れるの鶴の頃の自分に。だって助けてくれた事が奇跡なんですもん。正体を見られてしまった以上、ここにいるわけにはいきません。長い間、ありがとうございました。さようなら。」
大切な鶴は合図もなしにおじいさんの家から居なくなると、雪もミルクも霞む静かでスロウな真っ白い光の中、大きな翼をはためかせ、遥か彼方へ飛んで行ってしまいました。おじいさんたちは、さよならなのはわかっていたけれど知らないままでわからないフリをしていたのでした。
その後、二人は鶴が織ってくれた錦を売ったお金でシアワセにくらしましたとさ。めでたしめでたし。
【過去のaikoシリーズ】
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以上です。